漢字の「山」に似た形を5つ並べる。鈕の周囲の円圏のわきに5つの蕾(つぼみ)文があり、これと山字形
の間にある10個の同形の蕾文を棒で結んだ図柄が、山字の隙間を埋めるように組み合わされている。 この山字形は漢字ではなく、殷周青銅器に見られる鉤連雷文(こうれいらいもん)と呼ばれる文様と同一とする見方が有力である。山字文鏡では四山のものが最も例が多いが、円の五等分も初歩的な幾何学の知識で可能なた
め五山もかなり見られる。
また、地いっぱいに敷きつめられた羽状獣文も殷周青銅器と共通するもので、複雑にからみあった龍文が退化変形したものである。空間を隙間なく埋めつくす手法も含めて、この時期の鏡には殷周青
銅器との共通性が色濃くうかがえる。 |