三弦鈕の周囲に小さな方格があり、その四隅に足を留める形で4羽の鳥が描かれる。羽根を拡げ、
尾を頭よりも高く挙げている。その間には花菱文鏡に類似した松皮菱文様を入れている。鳥の文様に は目などに鋳造後の彫刻が加えられていて、No.10
などの蟠(ばんち)文鏡との技法的な近縁性が認められる。
地文は、珠文で中を埋めた鉤連雷文(こうれんらいもん)で、隙間を三角形と円形の渦文で埋めている。類例が以外に少
ない鏡であるが、他には松皮菱の代りに蕾形文様を入れるものや、松皮菱を半切りにして蕾形文や小 鳥を止めるものなどが見られる。
外周に連弧文(れんこもん)を入れる例(No.9)がほとんどない点からも、戦国末期までが製作年代の中心になる
ものと思われる。
|