細かな渦文と雷文を小さな格子状の枠の中に無作為に描き分けた緻密な地文の上に、上面の平らな
幅広の線で、3匹の龍の文様を描いた鏡。
3匹の龍はいずれも同じ形に描かれる。二本角を持ち、目を見開いて大きく口をあける頭部の表現 以外は、相当に崩れて装飾的となり、もはや胴体・手足の表現とは見えなくなっている。その末端は、
間を等間隔にあけた三ヶ所の松皮菱上の文様を間に挟んで、お互いに一繋がりになる。この松皮菱状 の文様も、本来は龍文の胴体の線を著しく装飾させて形成された龍文の一部であった。
前漢前期の50 〜 70 年ぐらいの期間は、戦国期の文化的伝統が色濃く残された時期で、も地文が次第に粗雑なものに退化してゆきながら、製作され続けていた。 |