鋳造で表した文様のない無文小型鏡の背面を金板で覆い、金線で花唐草文を描いて、地に細かい金粒(きんりゅう)を全面に敷き詰め、随所に緑松石(りょくしょうせき)・瑪瑙(めのう)やほかのカラフルな宝石類を象嵌
ぞうがん した鏡。
現在は石の多くが脱落しているが、鈕の上部・周囲も含めて、赤・青緑を含めた多彩色の石が、金 色の輝きの上に嵌め込まれた本来の姿は、華麗の一言に尽きたであろう。金工芸の細緻を極めたような細金細工(さいきんざいく)はペルシャ起源のもので、中国に流入して漢代以来装飾品に用いられ、北魏以降に著しく発達した。
華麗で多彩な宝飾背鏡(ほうしょくはいきょう)は、隋唐代の文化の華やかさと国際性を凝縮したものと言える。単に文様を
鋳造で表しただけの単色・単調な一般の青銅鏡との比較の上からも、高級品としての地位を占めていたであろうことが容易に想定できる。類例は西安市韓森寨(かんしんさい)出土鏡の一例のみしかない。直径が7〜8
・を下回る小型鏡は大半が懐中 かいちゅう 用・旅行用と思われる。 |