鏡背全面に彩画を施した鏡。文様はかなり・落しているが、外周には礦物系の顔料と思われる青・
緑・赤の三色で三角形を連ねた文様帯があり、中央には2ヶ所に龍の胴体と思われる鱗状(りんじょう)文帯が見 られる。中央の主文様は四分割と思われるので、龍と交互に鳳凰が描かれている可能性もある。
厚さ1・に近い薄い鏡胎をしており、鏡背全面と鏡面にごく一部見える地金の部分には鋳肌(いはだ)が残っており、実用を目的としない明器(副葬品)と考えられる。
彩画鏡は戦国前期から前漢前期までの例が何例か知られており(中国鏡年表・ 18〜20参照)、戦国期のものはいずれも南方の楚(そ)の領域から出土している。No.1のように、加飾としても彩色が用いら
れている例があり、前漢前期までの青銅鏡にはただ単に鋳造しただけというモノトーンの世界に終ら ずに、絵画的な色彩感覚までもが意外に多く求められていたことが考えられる。 |