一羽の鳳凰を鏡背面に描いたもの。その姿は双鸞瑞花(そうらんずいか)鏡などの鸞鳥(らんちょう)の表現に近似している。鳳凰は
顧首(こしゅ)して鈕の方に頭を向けて片足を上げ、羽根を大きく拡げて、尾羽を頭の真上まで高く跳ね上げる形に描かれる。これは鏡にもみな共通のものである。
隋唐鏡は蝋型 ろうがた 鋳造技法を用いており、鳳凰の形の蝋模(ろうも)を鏡胎(きょうたい)に貼り付けることで薄肉彫(うすにくぼり)に文様が
表現される。本鏡は頭の部分のみは薄肉彫りに表現するものの、それ以外の部分は全て細い線で描 いており、肉取りが薄く、おとなしい印象を与えている。唐鏡には、一匹の龍を鈕の回りに体をくねらせた形に描く盤龍(ばんりゅう)鏡があり、類例も比較的多く認められるが、一羽の鳳凰を全面に大きく描くものは数が少ない。
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