著しく図案化して構成された植物系文様である団華(だんか)文6つを並べた鏡。団華文は葡萄唐草(ぶどうからくさ)文などとともに西方伝来の文様で、花弁(かべん)を上から見た形を細密かつ極めて繁縟に表している。間にはパルメット中心飾風の文様が入る。文様の多くが、断面三角形状に尖った浮彫で表わされ、鈕座の周囲と団華
の円周部にも細かい放射線状の細線が密集しているため、非常にとげとげしい印象を与えている。
後述の海獣葡萄鏡も含めて、西方伝来の文様を主文とする鏡が初唐代に出現してくる事実は、漢式鏡が有していた極めて強い思想的背景が隋唐鏡においては次第に稀薄なものに変化していたことを
窺(うかが)わせる。外区の銘も純粋に鏡の機能の良さを讃えるもので、思想性を脱却しているさまが明瞭にうかがえる。 |