上方の銘に記されているように孔子と栄啓期の問答の場面を表わす。左方の冠を被り龍頭杖をついて長袍を着た人物が孔子で、左手を伸ばして問いかけ、右方の鹿裘(ろくきゅう)を身にまとい手に小琴を弾(つまび)いて歌う人物が栄啓期である。『列子』天瑞篇に見えるもので、孔子が泰山(たいざん)に游んだ折に、(せい)(現山東省寧陽
県北部)の野で栄啓期にその楽しみとする所を問い、「人と生まれたことが一番目の、男と生まれたことが二番目の、長寿を全うしたことが三番目の楽しみであった」と答えた故事に基づいている。別名
三楽鏡とも呼ばれる。
品には周縁が八花形のものと円形のものがあり、鋳出しの甘い踏み返し鏡が多いが、本品は台湾 故宮博物院蔵鏡などに次いで鋳上りが良好な部類に属する。
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