中央の方形の区画の四隅に葉文が付き、鏡の各辺縁の中央にも葉文の全形の3分の2ほどをのぞか
せて描く。下地には全面に羽状文を敷き詰めている。戦国期の羽状獣文に類似した形に見える。
全体の印象は、戦国後期の羽状獣文地四葉文鏡によく似ているが、四葉文の葉先の尖(とが)り方には大き な相違がある。また、戦国期の細密な表現の羽状獣文と比較すると、本鏡の地の羽状文は描線が太く、
極めて簡略化された小さな渦巻き状の文様だけを縦横に並べて敷き詰めており、全く様態が異なって いる。地文というよりは、この文様自体も主文のように目立つ文様になっている。
総合的に判断して、前漢前期ごろに行われた戦国鏡の模倣(もほう)作の一例と考えるのが妥当と思われる。 方形の鏡も、前漢中期以降には例を見なくなるものである。
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