直径の1/3以上を占める特大の扁平鈕(へんぺいちゅう)(鈕の径約5.3
・)を持ち、上下3段に重ねて神仙を描く。鈕の 右に西王母と白虎、左に東王公と青龍、下には伯牙と思われる弾琴像がある。伯牙の右の三山冠(さんざんかん)を被(かぶ)る人物は、右足を立膝にして両手を膝上に表し、伯牙の演奏に聞き入っているかのようである。外区には銘文がなく獣渦文
じゅうかもん が描かれている。
従来の編年観から言えば、鈕の上下に縦長の銘帯を伴わないものは、紀元鏡では建安22 年(217)以 後のものに限られ、扁平鈕も三国期のものと考えられていたが、1987
年に浙江省紹興県出土の建安10 年銘鏡にこの2者が備わっている例が報告されている。
また、外区に銘帯がなく獣渦文帯だけを描く例も極めて少なく、わずかに浙江省紹興県蘭亭大饅頭(らんていだいまんとうとん)出土鏡とボストン美術館蔵鏡に見られるのみで、そのうえこの3者は重列神獣鏡の中でも抜群に文様表現・鋳上りにすぐれている点でも共通している。
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