高く突出した線で龍4匹を表わす鏡。龍はいずれも同形で、前後の足を踏んばって、胴部が大きく
上に湾曲し、その下に頭を入れて後足の方に振り向いている。No.15 の星雲文(せいうんもん)鏡のプロトタイプとな
る鏡で、鈕座も側面から見ると、山を連ねたような連峰(れんぽう)状を呈する。
類例には、草葉文(そうようもん)鏡に類似した方格銘帯や麦穂(むぎほ)文を入れるものや、方格規矩蟠文鏡などに見ら
れる方格規矩(ほうかくきく)文を入れる例があり、製作年代のおおよそが知られる。 地文を用いない手法、鈕や外縁を分厚く高く突出させて凹凸を強調した、おおらかで力強さにあふ
れた表現技法などには、戦国鏡の平面的で繊細な表現技法との著しい差異が認められる。時代性と言 えよう。
地が素面(そめん)のため、鈕と四乳を結んでひかれていた文様の割り付けのための細線が確認できる。 |