上部中央に、故座(こざ)して膝上の琴を奏でる伯牙(はくが)(傍題は白牙)の弾琴像があり、両側には鳳凰と一角獣
(麒麟)がこれに聞き入るかのように描かれる。伯牙は春秋時代の琴の名手として有名であるが、ここでは肩から羽毛(うもう)を生じて神仙としての扱いをされている。下部には向かいあう二対の龍形と虎形があり、その表現は龍虎鏡(盤龍鏡)のそれと同一である。
伯牙の弾琴像は時代の下る神獣鏡の中に頻繁に描かれる図像で、伯牙の奏でる音楽に東王公・西王母に代表される陰陽(いんよう)を調和させる機能が与えられていたと考える。本鏡の銘文にも「白牙拳楽」の句があって、銘全体も典型的な神獣鏡系の銘であり、白牙の図像の持つ意味合いは神獣鏡と全く同一の
ものであったと思われる。
龍虎鏡(盤龍鏡)はむしろ半肉刻獣帯鏡や画像鏡と近縁性の強い鏡であり、このような神獣鏡系の伯牙の単独像と何故組み合わされたかは今の所説明が難しい。
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